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青江三奈「恍惚のブルース」を見る──{Youtube}

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川内康範さんの訃報が伝えられたとき、BGMに、なぜか「恍惚のブルース」が流されていた。「なぜか」というのは、川内さんの作詞した中での代表作とは思わないからだ。もっと他の曲があるだろう、と思った。だけどそれは、とても川内さんの訃報に似合っていた。

私は無性に青江三奈の「恍惚のブルース」が聴きたくなった。歌ったことなど一度もないけれど、こういう形のヒット曲はすりこまれている。「おんなのいのちはこいだから」の出だしも、「あとはおぼろ あとはおぼろ」「ああこよいまた しのびよる こうこつのぶるーすよ」の歌詞もメロディも覚えている。不思議と言えば不思議。それが時代。


私は演歌にはまったくなじみがない。それどころか、Bluesでもないのにブルースを名乗る一連のこれらの歌謡曲は大嫌いなものに属する。なのに覚えている。これが時代を生きてきた、ということであり、それが時代の歌、というものの凄味なのであろう。
 



 


椎名誠さんの初期のエッセイに、ウォークマン体験記のような形で、「夜の中央線で演歌を聴いてみた。不思議な気分だ」のようなものがあった。酔っぱらいサラリーマンの帰宅する時間の中央線で、ウォークマンで演歌を聴く。イコール、音を遮断し、目の前の光景がBGVになることを書いたものだった。このときの演歌がたしか青江三奈だったように記憶している。椎名さんは音楽はまったく知らない人である。

そのときの私は演歌を聴かないこともあって、椎名さんと演歌の組合せに苦笑した程度だった。今はこの組合せが絶妙に思える。
疲れたサラリーマンが帰宅する中央線には、やはり演歌が似合う。
くたびれて、電車の中で眠りこける日本人戦士の映像を外国に流すなら(なんでそんなものを外国に流すのかはおいといて)BGMは演歌だろう。


餘談ながら、つい先日椎名さんは、電車の中、身近でイヤフォンからシャカシャカさせている若者の音がどうにも我慢できず、そいつのヘッドフォンをむしりとったそうである(笑)。『週刊文春』のエッセイに書いていた。その話を聞いた周囲からは、「あぶないことをしましたね」と心配されたそうだ。

でも椎名さんは殴り合いをしてきた人だから大丈夫だろう。そういうバカはすぐに切れて刃物を出したりするからアブナイけれど、椎名さんが書いていたとおり、ケンカをしたことがないから、鼻っ柱に一発いれればおとなしくなる。要は逆上する機会を与えないことだ。
 



さて、「恍惚のブルース」を聴きたいと思ったが、入手がむずかしい。流行のJpopならなんとでもなるが演歌である。しかも昭和41年のヒット曲だ。レンタルにあるだろうか。ないような気がする。いったい誰が借りる。図書館にはあるような気がするが……。


情報通のmomoさんにメールで相談してみた。するとmomoさんはすぐに「{Youtube}にあるよ」と教えてくれた。
なるほど、{Youtube}はこういう演歌すらもあるのか。便利だ。
 



 


無事{Youtube}で聴けたのだが、すこし不満も残った。というのは、この種の映像は比較的新しい。私の見た「平成2年の紅白歌合戦」をあたらしいというかどうかは意見の分かれるところだろうが、私としては、それはあたらしい、のである。


歌手はみなそうだけど、歌い続けている内にくずしてしまう。そりゃあ同じものを何十年も、何百回、何千回と歌っていればそうなる。それはそれで味だろう。だけどこちらの聴きたいのはオリジナルだ。私の聴きたいのは昭和41年の「恍惚のブルース」なのである。


いま図書館を検索したら、あるようだ。カセットテープではないかと心配したが、CDだから、借りてきてパソコンに入れられる。へんに新録音なんかではなく、古いオリジナル音源であることを願う。
 



 


こんなことがあると、これからも突如として懐かし演歌を聴きたくなることがたびたびありそうだけど、そういうわけでもない。たとえば、川内さんと「おふくろさん問題」でもめた森進一を聴きたくなることはまずないだろう。いや「おふくろさん問題」は関係ない。森進一に興味がないのだ。美空ひばりも絶対にないと言い切れる。


可能性としては、三橋美智也と島倉千代子か。三橋美智也は氷川きよしがあの路線を踏襲しているので、常にちらつく。「古城」「星屑の町」の流れ。島倉千代子は「東京だよ、おっ母さん」。村田英雄もあるかもしれない。「皆の衆」のあたり。あ、都はるみがあるかもしれない。「北の宿」はない。これもぜったい。あるとしたら、「好きになった人」とか、初期のものだ。
すこし色合いは違うがザ・ピーナッツは別格。これはもうCDでもっている。
 



 


今回我ながら新鮮だったのは、青江三奈という歌手が、まったく想定外だったからである。私は今時のキャバクラのようなものにも近寄らないが、むかしのキャバレーのようなものも一切知らない。行かない。演歌の中でも、夜の生活を歌った一連のものがもっとも嫌いになる。そのタイプの代表が青江三奈であり森進一だった。


突如「恍惚のブルース」を聴きたくなった自分を気に入っている。



momoさんが、ちあきなおみの「黄昏のビギン」も捨てがたいですよ、と書いてくれた。
私はこの曲を知らない。ちあきなおみのヒット曲はみな覚えているのだが。
彼女もまた消えた天才歌手として、いま一部で熱いブームとなっているひとである。
今からその「黄昏のビギン」を探して聴いてみる。


 


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【附記】──芸名の由来──歌詞の内容



 Wikipediaに、当時川内康範が連載していた小説「恍惚」のヒロインの名から「青江三奈」が、そこからまた「恍惚のブルース」が出来たと書いてあった。そういえばむかし、そんな週刊誌の記事を読んだことを思い出した。

 この歌をあらためて聴いて、内容がヘンだと感じた。つまり、一般的な演歌の内容ではなく、それこそ今風のテレビドラマとリンクして作られた「ドラマのタイトルソング」みたいなのである。それがこのWikipediaで納得がいった。最初から「小説『恍惚』の主題歌」として作られていたのだ。青江三奈の名が小説から取られたことは覚えていたが、小説とリンクした歌だとは知らなかった。

 そう考えてくると、「月光仮面」なんかよりも遙かに、川内さんを送る歌としてふさわしく思えてくる。



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恍惚のブルース

川内康範 作詞
浜口庫之助 作曲

 

女の命は 恋だから
恋におぼれて 流されて
死ぬほどたのしい 夢をみた
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ 今宵また しのびよる
恍惚のブルースよ


 

あたしをこんなに したあなた
ブルーシルクの 雨が降り
こころがしっとり 濡れていた
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ 今宵また しのびよる
恍惚のブルースよ


 

あなたがこんなに したあたし
ブルーパールの 霧が降り
あたしは貝に なっていた
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ 今宵また しのびよる
恍惚のブルースよ

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