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韓国版「容疑者Xの献身」感想──偶然機内で観た作品

perfectnumber (1) 東野圭吾の小説「容疑者Xの献身」を韓国で映画化した『容疑者X 天才数学者のアリバイ』が、4月20日よりシネマート六本木ほかにて全国順次公開されることが決定した。

 日本では福山雅治、柴咲コウの共演で2008年に映画化された同作。韓国では、「白夜行」が2009年に『白夜行 -白い闇の中を歩く-』として映画化されており、東野作品の映画化は『容疑者X 天才数学者のアリバイ』で2作目となる。

 『容疑者X 天才数学者のアリバイ』でメガホンを取ったのは、映画『キッチン ~3人のレシピ~』などに出演した女優でもあるパン・ウンジン。偶発的に前夫を殺してしまう女性を、映画『光州5・18』のイ・ヨウォン、その女性のために知恵を絞る天才数学者を、映画『生き残るための3つの取引』のリュ・スンボム、その数学者の旧友でもある事件の担当刑事を、チョ・ジヌンが演じた。

 東野作品は韓国でも人気だというが、日本人作家の作品が2作も映画化されるのは異例のこと。東野は「『白夜行』のときと同様、とても真摯(しんし)に作られているという印象です。格調を感じられました。思い切ったアレンジだと評価したいと思います。大げさでない抑えた演技は、とても印象的でした。それぞれの葛藤が、よく表現されていたと思います」と絶賛のコメントを寄せている。

映画『容疑者X 天才数学者のアリバイ』は4月20日よりシネマート六本木ほかにて全国順次公開

http://www.cinematoday.jp/page/N0050224

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 大韓航空の機内で、映画「容疑者Xの献身」韓国版を見た。韓国での封切りは2012年の10月、百万人動員のヒット作らしい。あちらでの英名は「Perfect Number」。

 私は機内では本を読むかノートパソコンをいじっていることが多く、映画を見ることはめったにない。パソコン使用禁止の時間にリモコンをいじっていて、上映リストにこの作品があることを知った。小説も読んでいるし日本版も見ている。そして実はこのことがそれ以上に大きいのだが「ブログに感想文を書いている」ので、見てみることにした。たぶんそれがなかったら私は見なかった。ブログに感想文を書き、それに対していくつかのメールももらっているので、ここまできたらもう毒を食らわば皿まで?の気分で、ブログネタにしようと思って見たのだった。
 日本版に、いくつかの不満を書き綴ったので、韓国版ではそこが改善されているか興味深かった。

kanren6映画「容疑者Xの献身」感想文──ミスキャスト堤真一の熱演──


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 と書いたところで検索し、上記の引用記事を見つけた。日本では今年の4月20日から上映であり、まだ未公開と知る。じゃああまり細部には触れないのが礼儀だろう。よって韓国版の論評ではなく、あらためて小説と映画というこの作品そのものの感想を書くことにする。前回の続きである。

 ネタバレと怒られない細部のことで言うと、殺人に使われる兇器?は、小説も日本版映画も「こたつの電源ケーブル」である。こたつのない韓国版ではどうするのかと思っていたら「アイロンの電源ケーブル」だった。娘とふたり暮らしの女がアイロンを掛けているところに元亭主がやってくる、という展開だ。



 この作品のいちばんの魅力は「よく出来たトリック」であり、「それを解いてゆく(=解かれてしまう)おもしろさ」だ。
 缺点は、「そこに到る過程の不自然さ」であろう。

「さえない風貌の高校数学教師が、隣室の(中学生の娘)子連れバツイチ女に片想い」が前提で、「その女の元亭主殺人という犯罪を、数学教師が別の殺人を犯してまでアリバイを偽造して庇う」がテーマ。そのトリックを、原作と日本版映画では犯人と大学同期の準教授の湯川が、韓国版映画では犯人と友人の刑事が、解く。
 「ガリレオ」シリーズの一作だから、日本版ではシリーズ主役の湯川がいるが、韓国版では謎解きをどう処理するのかと思ったら、「犯人の友人の刑事」という設定だった。



yogisha2 映画では、時間の関係から、この教師がいかに隣室の女に惚れているかを描く時間がない。だからどうしてもそこのところに無理が生じる。
 日本版だと、堤真一ほどのいい男が、なぜにそれほど松雪泰子に惚れこむかがわからなかった。それでも毎朝弁当屋に通うシーンはよく出来ていた。
 韓国版では、主人公の鬱屈した暗さとかっこ悪さは日本版よりもよく描かれていたが、トリック作りと、それを解く刑事に重点を当てていたので、この数学教師が隣室女の勤める弁当屋で毎朝弁当を買うのだけが楽しみという片想いの部分は、日本版よりも簡略化されていた。だから殺人現場に顔を出すのが唐突に感じられる。



 毎度思うのだが、原作を知らずに映画だけを見るひとは、その辺をどう解釈するのだろう。映像の威力は活字よりも桁違いに大きく、映画を見てから小説を読むひとのほうがそうじゃないひとよりも遥かに多い。
 この作品は小説も映画も大筋で一致しているからいいが(だから私も語ることが出来る)、「白夜行」なんてまったくの別物である。テレビドラマを見てから原作を読んだひとはどう感じたのだろう。あれはテレビドラマのお蔭で百万部を突破するベストセラーとなったが、テレビドラマとの共通点はない。
 


 これは原作にも通じる不満だが、あの場面でドアを開けるだろうか。押し掛けてきた乱暴な元亭主をドタバタした揚げ句に殺してしまった。それには中学生の娘も荷担していた。という究極の錯乱状態のときにノックの音。「ど、どなたですか!?」と返事をするまではいいとしても、「隣室の者です。どうかしたんですか」という普段つきあいのない隣室の独身男の声。大きな物音を立てていたのは事実だから問われるのはしかたない。でもこちらは女ふたりの世帯だ。ドア越しに「さわがしくてすみません。でもなんでもないんです」と応えて終りだろう。なのになぜか急いで死体を見えないようにして、ドアを開け、隣人を招きいれるのである。そりゃ招きいれなきゃ物語が始まらないから当然なのだが、普段から親しく、料理を独身男に分けてやったり、旅行に出た独身男がふたりに土産を買ってきたりとか、互いの部屋を行き来したりと、そんなつきあいがあるならともかく、隣室の独身男は、明るい母と娘のやりとりを物影からネトーっと盗み見るような、そんな関係なのである。毎朝の弁当屋でも、気の利いた会話一つ出来ないのだ。どう考えても、あそこでドアを開けて隣人を殺人現場に招きいれるのは不自然である。「それを言っちゃあおしまいよ」なのだが。



 韓国版では日本版よりも「元亭主」がより厭な悪質な男に描かれていた。女監督だからだろうか。逆に弁当屋の女は、日本版よりも清楚で魅力的に描かれていた。その点は、日本版の松雪のほうが適切だったように思う。女の美人度、佇まいは松雪ぐらいが原作に合っている。日本版のミスは数学者石神のキャスティングだ。

 この悪辣な元亭主の演出は不可解。かつては愛しあい子供まで作った男女である。それが今、女は清楚で益々魅力的な佇まいなのに、男は粗暴で最悪の人間のくずのようである。こんな男にこんな女が惚れて、かつて愛しあったとは信じがたい。こういう不自然な演出ってハリウッド映画にもあり、あとで「監督は女で、男嫌いのレズ」と知って、納得したりする。この女監督もなんかあるんじゃなかろうか(笑)。
 でもまあ世の中にはそんなカップルもいるんだろうなあ。最低の男に尽くすのが生きがいみたいな女もいる。私は女を殴ったりつきまとったりしたことがないのでよくわからんけど、それをしてもそれなりにもてる男もいるのだろう。それにしても「いい女とひどい男」の描きかたが極端すぎるように思う。



 こういうリメイク作品を映画館まで観に行くひとはどんなひとなのだろう。日本版を見ているから、韓国版も見よう、ということなのだろうか。日本版にはまったく興味がなかったけど韓国映画大好きだから見よう、なんてひともいるのか。私は機内で無料で見られたから見たけど、映画館に行くことはなかったろう。これは言いきれる。DVDになったら日韓のちがいを知りたくてレンタルしたかも知れない。

 と書いて、日本未公開だしもちろんまだDVDにもなっていないのだから、「大韓航空だから観られたんだ」と気づく。字幕は英語だった。日本語吹き替えにはなっていない。リモコンには「日本語版」を撰べるようになっているのだが、それを押してもまだ吹き替え盤は用意されていなかった。つまり韓国でもまだ映画館から降りてきたばかりなのだ。とすると、他の航空会社でこの作品がラインナップされているとは考えがたい。
 4月20日に日本で封切りならレンタルDVDになるのは早くても10月頃だ。後々レンタルで見て、ここに同じ事を書いたとしても、アップするのは数年遅れていたろう。このタイミングで書けた偶然に感謝すべきなのか。



 映画「韓国版白夜行」も見てみたい気がするけど、私はこれのテレビドラマも映画も大嫌いだから見ない方がいいのだろう。まあ嫌いと言うよりもあれは映画に出来る素材ではない。「白夜行」の主人公は〝時代〟であり、19年間という時の流れだ。それを2時間程度の枠に収めることは不可能だ。でもそんなことは誰でも判っているから、時間を縮め、原作では口を利かないふたりを主人公にしての恋愛物語という切り口にする。それしかない。でもそうするとまったく別のものになる。実際なっている。
 という映像「白夜行」に対する怒りと比すと、映像「容疑者X」はすんなり見られて不満のない作品になる。封切られたら世間の感想を探してみよう。



yogisha と書いて私は今、猛烈に「日本版容疑者X」を観たくなっているのだが、あのDVDはどこにやったのだろう。映画ファイルはパソコンでいつでも観られるようにISOにして入れてあるのだが、いま探してみると、映像用3teraHDD500本ほどの中に入っていない。映画保存HDDに移したのだったか。いや、レンタルして見て、コピーすることなく返却したのだったか。

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【追記】──上部の引用した記事に《日本では福山雅治、柴咲コウの共演で2008年に映画化された同作》とある。「ガリレオ」のシリーズだから、福山主演という言いかたまでは許容するとしても、実質的にはどう考えても「堤真一主演」の作品であり、堤の名を出さないこういう表現は失礼だと思う。この記事を書いた人は、この映画に対する思い入れがないのだろう。あったらぜったい堤の名は無視できない。



【追記.2】──二度目を観ての感想──2013/6/5

 行方不明だったDVDが出てきたので、二度目を観ました。
 二度目なので一度目とはちがういくつもの部分が目につきました。その後、2011年10月に書いた日本版の感想、2013年3月に書いた韓国版の自分の感想を読み返し、私の感想はまちがいだらけだと感じました。

 私の感想記は、「ある食堂に行って、喰ったモノの感想を、その食堂全体の感想として書いていて、その食堂の全体の雰囲気や、厨房の苦労や従業員のマナー等には触れていない偏屈なモノ」のように思いました。

 私も「感想記を書くために観た」なら、もうすこし気遣いをした文を書けたように思います。上記、食堂の例えで言うなら、レポートすることが決まっているなら、そういう点にも注意して観ますよね。でもそうじゃないので、ごく素朴に、「心に残った点」のみを書きました。それで偏った感想になったようです。

 二度目を観て、いろいろ気づいた点を考慮し、全面的に書き直そうかとも思いましたが、そのままにすることにしました。偏った、とても褒められたものではない感想記だとしても、それは一度目に観た私の正直な気持ちなのだから、これはこれでいいのだと、解釈することにしました。

 と、自分の偏頗な部分を反省しましたが、基本である「日本版の堤真一はミスキャスト。もっと不細工な俳優にすべき」は変りません。これだけは譲れません。  

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