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すなおに金妍児(キム・ヨナ)を讃えよ!




 というわけで唯一観戦した女子フィギュアスケートとともに私のバンクーバーオリンピックは無事終った。次の開催地は「ソチ」と知り、「ソチってどこだ?」とGoogleMapで調べるモードに入っていた。





 ここである。黒海沿岸。赤の十時じゃなくて青いポイントの方。ここもまだロシアなのだ。西南の外れである。


 赤点のところ。この地図で見るといかに端っこであるかよくわかる。


 ロシアはでかい。心底から「返せ、北方領土!」と思う。


 ここまでロシアにだましとられている。根室岬から国後島を望むとしみじみ怒りが湧いてくる。

 日本人的感覚だと、ロシアはあれだけでかいのだから北方領土ぐらい返してもたいしたことないと思いがちだ。だが国土の広い国ほどそれにこだわるらしい。金持ちほどケチと同じ感覚か。


 こういうことを言うと問題かもしれんが、私は竹島はどうでもいい。もうあんなちっぽけな岩の固まり、韓国が駐留して死に物狂いで主張しているのだからくれてやれ、と思う。支配海域のことを考えると「ちっぽけ」ではないのだが、もうあんな国といつまでももめていてもしかたないと思えてしまう。しかし北方領土はちがう。あれは明らかな不法占拠だ。とまあ冬季オリンピックはもう過ぎたこととして、そんなことを考えていた。



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 午後から夕方のテレビは女子フィギュアスケート一色だった。浅田もテレビに出ずっ張り。私はリアルタイムで見たのでもう満腹である。

 浅田の「悔しいです」のすなおな発言もよかったし、家電量販店のテレビの前に集った人びと、号外を読んで感想を語る人、みなそれぞれ日本的でおもしろかった。浅田が「悔しいです」と言うとき、ザブングルの顔をしたらよかったのにと思ったが、そんなことを考えたら非国民になるかと自重する。



 不満として、「銀メダル、おめでとう」「勇気をもらった」「お疲れ様と言いたいです」等一連のコメントは、いかにも日本人らしい心遣いであり、ほのぼのとするのだが、もうすこし、「惜しかったねえ、キムヨナが凄かったから」「浅田はがんばったけどキムヨナが強かった」があってもよかったように感じた。


 もっともそれらはテレビ局の差配である。どんなコメントを選ぶかは彼らの自由だ。だがTBSやテレ朝のような日本を貶めることが大好きな局は、浅田へのお疲れ様よりキムヨナ讃歌の方が多すぎて、私のようなのが「もっと浅田を讃えろ!」と言いたくなるような編集をするのではと思っていた。ということから考えると、圧倒的に浅田への感謝のコメントばかりだったのか。






 そうそう、印象的なこととしてこれを書いておこう。ワイドショーの解説に村主章枝が出ていた。連日出ていた。そこで彼女が今回の女子フィギュアスケート中継を振り返り、感想として言ったのは、「日本中の人、テレビ局の人に、こんなに自分達が注目されているとは知らなかった」だった。アナが「そうなんですよ、みんなが注目して期待しているんですからがんばってくださいね」とまとめていた。選手として銀盤の上にいたので、初めて外から触れて、その熱気におどろいた、感動した、ということのようだ。心に残った。






 もう冬季オリンピックのことを書くことはないと思っていたら、すこし事情が変ってきた。キムヨナを讃えない人たちがいる。いや誹謗中傷している。これはおかしい。「金で審判員を買収した」とか、汚らしいことを言って否定している。それはない。そんなことを言ったら言った自分が惨めになることが、浅田に対して失礼なことが、わからないのだろうか。







 私もショートでの5点近い差は大きすぎると思う。でも一昨日書いたように、審査員はプロだが、同時に人間である。硬質な浅田の演技より艶のあるキムヨナに高い点をつけたのは自然と解釈する。


 フリーに関しての批判は、浅田がトリプルアクセスを成功させたのに点数が低いことへの不満のようだ。すなわち、難易度の高いそれをやった浅田が、やっていないキムヨナよりなぜ評価が低いのかと。

 しかし私は見ていて、浅田の「トリプルアクセスと2回転」より、キムヨナの「3回転、3回転」の方を、美しく華麗に感じた。それはキムヨナのコーチが選手時代、トリプルアクセスにこだわりすぎて金メダルを取れなかったことの反省から、キムヨナの演技に設定したものである。考えぬかれた戦略だった。それが見事に結実した。


 私がキムヨナの方が美しい、華麗だと感じたと言えば、キムヨナ否定者は「おまえは素人だろう。審査員はプロだ。そのプロの採点に問題があるのだ」と言うかも知れない。だがプロも、会場にいる素人の歓声と昂奮度は無視できない。その影響を受ける。毎度言うが、「浅田の硬質な少女(アスリート)としての演技」より、「キムヨナの艶のある女(表現者)としての演技」が高い評価を受けたのは、私にはごく当然のことに思える。


 一部激昂したひとは、「こんな採点ではもうトリプルアクセスのような難しい技にに挑む選手がいなくなる」と怒っていた。いなくなるかどうかはともかく、浅田よりもキムヨナの方が断然高い点数を獲得した事実は、「金メダル戦略」として今後考慮されるだろう。それはよいことである。







 東京オリンピックの女子体操金メダルにチェコのチャフラフスカがいた。「体操界の華」と謳われた。いま見たら演技は苦笑するほどレヴェルが低い。たいしたことはやっていない。それはしかたない。だってふくよかな、ほんとに女の体形だから。それがそのころの女子体操だった。女性らしい体形の選手が女性らしい演技をしていた。やがてコマネチの時代を迎え、いつしか女子体操は胸もお尻もない十代の小柄な選手による上海雑技団の世界になる。







 38年間女子フィギュアスケートを見てきて、最も印象的なのは、初めて見たあのビールマン・スピンだった。なんちゅうことをするのだと思った。この世のものとは思えなかった。しかし今やそれは演目の中の誰でも出来るひとつの技に過ぎない。



 その流れで、むかしの女子フィギュアスケートと比べたら、浅田もキムヨナも上海雑技団の世界である。とんでもなく凄いことをやっている。過日の文章に札幌オリンピックのジャネット・リンの写真を添えたが、彼女や、美人選手として日本のホープだった渡部絵美らと比べたら、もう確実にコマネチだ。


 テレビのバカコメンテーター(誰だっけ、あの将棋の真鍋と同棲していた埼玉の元市会議員)が、「キムヨナは女の私から見てもぞくぞくするほど色気がある。その色気の勝利だ」ともっともらしいバカ発言をしていた。アホかいなである。浅田よりは色っぽいにせよ、キムヨナだってその意味では硬質少女だ。ほんとうに男をぞくぞくさせる色っぽい選手は他にいくらでもいる。







 切りがないのでもう止める。やたらテクニック路線に走る中、表現力に重きを置いたキムヨナの金メダルは、その意味でもいいことだと思った。その意味もなにもあらゆる面で満点であり、史上最高得点にふさわしい完璧な演技だった。


 私は愛国者だ。日本贔屓だ。「日本列島は日本国民だけのモノではない」と気違いじみたことを言う総理を否定する。帰化を拒んでいる外国人永住者に選挙権を与える必要はないと思っている。夫婦別姓なんてのは確実に家族の繋がりを壊す。反対だ。


 だけど日本人だからというだけで過剰に期待され持ちあげられる力士より、がんばっている外国人力士の方が好きだ。


 同様に、キムヨナの金メダルを心から祝福している。浅田が転んだりしたことに乗じての成績ではない。ディープインパクトのレースで私がいちばん好きな天皇賞(春)のように、彼女はショートでもフリーでも、かつてない地平を自らの手で切り開き、自分から仕掛け、己の力で独走した。レコードタイムで走りながら2着だったリンカーンの無念に浅田がかぶさる。この美しさを賞讃できないひとは心が曇っている。

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