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映画「悪人」感想

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ストーリー
芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラーを妻夫木聡&深津絵里主演で映画化した人間ドラマ。長崎の外れの小さな漁村に住む祐一(妻夫木)は出会い系サイトを通じて佐賀在住の光代(深津)と出会う。逢瀬を重ねる2人だったが、祐一は世間を騒がせている福岡の女性殺人事件の犯人だった……。監督は「69」「フラガール」の李相日。共演に岡田将生、満島ひかり、柄本明、樹木希林。

キャスト・スタッフ
キャスト: 妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明、宮崎美子、松尾スズキ、光石研、余貴美子、塩見三省、井川比佐志、永山絢斗、中村静香、韓英恵、山田キヌヲ
監督: 李相日
原作: 吉田修一
脚本: 吉田修一、李相日
撮影: 笠松則道
美術: 種田陽平
音楽: 久石譲
http://eiga.com/movie/55078/より

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見始めてすぐ、「ここ、どこなんだろう」と思い、DVDを止めてネット検索した。都会は福岡、ふたりは佐賀と長崎と知る。深津絵里の住む退屈な田舎は佐賀、妻夫木の海のちかい住まいは長崎なのか。この映画はその「地方性」を抜きには語れないだろう。

役者として評価の高い深津だが私は彼女の魅力を知らなかった。テレビドラマは見ないし、邦画もめったに観ないので。
この作品を観て彼女がすぐれた俳優であることをやっと知った。人気の高さを理解した。

原作もベストセラーであるというし(映画化の相乗効果でさらに売れたのだろう)、多くのレビュウがあると思い調べたら、下記のサイトに行きついた。

http://d.hatena.ne.jp/tanu_ki/20110727/1311747791

これはすごい。感激した。一本の映画によくぞここまでの感想を書けるものだ。妻夫木の乗るスカイラインの製造年や大学生の乗るアウディにまで触れている。映画に関わったひとは、こういう微に入り細に穿った感想を書いてくれるファンはうれしいだろうなあ。このひとの感想を読んだら満腹してしまい、とてもとてもお粗末な自分の感想など書けやしない(笑)。



地方性、地域性ということから、この映画を観ながら、茨城出身の私は、鹿島の農家を主題にした柳町監督の「さらば愛しき大地」を思い出した。あれを見たのはいつだったか。調べたら1982年の作品。もう30年も前になるのか。
茨城と言っても福島寄りや栃木寄りでは環境が異なる。あの映画に描かれているのは利根川を挟んだ千葉寄りの田舎特性であり、鹿島にちかい私には「よくわかる」作品だった。あれは福島寄りの日立とか、栃木寄りの真岡(もおか)等ではまた異なってくる。

そういや神戸の友人が映画「下妻物語」の「下妻」を地名ではなく「妻」からの勘違い解釈したことを思い出した。「下妻」なんてのも全国的には珍地名になる。同じ茨城県なので地名そのものには馴染んでいるが行ったこともない。異国をいっぱい知っているのに、生まれ育った県内に行ったことのない地のあるふしぎ。

監督の苗字である「柳町」も全国的には珍しいのだろうが、同級生にいたりして親しみがあった。牛堀出身のひとである。牛堀(うしぼり)なんてのも珍地名だろうが、私の生家から10数キロ、茨城時代にはクルマで走りまわっていて馴染み深い。
ちなみに私は小学校から高校まで、全国的に最も多いとされる鈴木、佐藤、渡辺、高橋という苗字の友人はいなかった。いや友人以前にそういう苗字のひとがいなかった。全国的にはありふれていても、私には鈴木や佐藤は新鮮な苗字になる。これもまた地域性だ。

上記ブログで、あらためてまた感激したのは、そんなことを思いつつ読み進んでいたら、見事に「さらば愛しき大地」の話が出て来るのである。いやはやすばらしい映画感想文で、私の書くことはない。そちらを読んでください(笑)。

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さて、私が素朴に感じた疑問がひとつ。
理髪店を営む柄本明と宮崎美子は平凡だけどとてもいい夫婦に見えるのだが、ああいうところからもああいう乱れた娘は出てしまうのだろうか。私にはそれがわからない。「今時のごくふつうの娘」を描いたのだろうが、私からするといろんな意味でカスである。殺されたことにぜんぜん同情できない。
そうなんだろうな。それが「今」なのだろう。今時の若者はそういうものなのだろう。そのへんを理解しないとこの作品の根本が理解出来ないことになる。でもイヤな女だった。親からするとかわいいのだろうが。

なにしろ私は「出会い」が嫌いだから、人恋しくてそういう「メディア」に関わるひとの気持ちがわからない。金持ちの知人にキャバクラというのに連れてゆかれたが時間の無駄としか思えなかった。なんでおれが金を払って(払ったのは知人だけど)こんなバカ女と会話しなきゃならんのだと不愉快になった。若い女は若いということを過剰に意識し、おじさんはみな自分たちに興味がある、狙っている、いやらしい、と思っているようだけど、私みたいにバカにちかよるとバカが伝染ると毛嫌いしているのもいるのだ。いやもちろん若くて美しくて聡明な女は大好きですよ。でも現実には「若いだけのバカ」ばかりでしょ、礼節も常識も知らない。当然なんだよな。若いとはそういうことだ。

アウディに乗っている裕福な大学生が、餃子を食ってきてニンニク臭い女(そのあと殺される被害者)を嫌う場面があり、この大学生は「悪人」と嫌われるようだが、あの感覚はわかる。ああいう女のがさつはたまらない。あのへんは市井の理髪店の娘としての「育ち」をあらわしているのだろう。「女将じゃなくて仲居」のあたりのセリフはいいな。原作を読まないと。
裕福な大学生がアウディ、解体屋人夫の妻夫木が改造スカイラインというのもわかりやすい「設定」だ。

老舗旅館の息子で裕福な大学生は、保険の外交員の女(高卒? 専門学校卒?)を「おれのつきあう女じゃない」と見下していて、女は裕福な大学生に憧れつつ、肉体労働の男を「わたしは、あんたなんかとつきあう女じゃない」と誇っている。その辺が衝動殺人に繋がるのだが、こんなことでひとを殺すかなあ。それは妻夫木演じる青年の内なる闇になるのだろうが、この青年、とても気がいいし、やさしいし、そのへんも原作を読んでみないと。
階級社会をことさら強調するのは朝鮮人監督の演出のように感じる。この監督はこれが好きなんだ。なにを撮っても必ず出てくる。

結局、これって「閉じ込められたひと、そこから脱出できないひと」が、「閉じ込められた世界の中」で、もがく物語であって、田舎者だけど、閉じ込められなかったし、東京の名のある大学を出してもらい、好き勝手に世界を歩いてきた私には、妻夫木や深津の演じる「地方に閉じ込められた憂鬱」は無縁の世界だ。
「さらば愛しき大地」の根津甚八演じる主役は、自然環境にも経済的にも、さらには女にもセックスにも恵まれているのに、それでも飽き足りないものがあって覚醒剤に手を出してしまう。どんなにあがいても「田舎の百姓の跡取り」ということからは逃げられない憂鬱だ。そういう連中を知っているから、「わかる」のだが、「無縁」であるのも事実だ。どういう「感想」が望ましい(誰に?)のか戸惑う。

しかしこの映画を楽しんだほとんどのひとは、主人公のように閉じ込められてはいないだろう。主人公ふたりのような環境のひとが観たら、どんな気持ちになるのだろう。見ないと思うが。中には深津演じる女のような環境のひともいて、「わかるわかる」と感動したのだろうか。

原作者ももちろん長崎出身だが東京の法政大学を出ているのだから閉じ込められてはいない。あくまでも創作だ。
と、考えてゆくと、これって「閉じ込められていないひとが閉じ込められているひとを描き、閉じ込められていないひとたちが、閉じ込められているひとを、閉じ込められていてかわいそう、と同情する映画」になる。最も安易な感動パターンだ。

前記のブログには「テルマ&ルイーズ」の名も出ていた。私の好きな映画である。この映画では女ふたりの平凡な生活からの脱出が描かれ、分不相応なそれは、やはりというか当然というか破滅して終るのだが、その脱出過程が小気味良かった。まだ無名のブラピがチンピラ役で出ている。
「悪人」もそんなエンディングを期待したが、脱出までゆかず、こじんまりしたまま終っている。
出来るなら「ゲッタウェイ」みたいにふたりで無事メキシコに逃げて欲しかったが、それは無理だしなあ。
とにかく原作を読んでから、もうすこし書き足そう。

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【附記】──名優深津絵里のこと

彼女がメジャーになったのはテレビドラマ「踊る大捜査線」に出演してからなのだとか。私は見ていないので知らない。
それでも映画「ザ・マジックアワー」「女の子ものがたり」「博士の愛した数式」を見ているし、政治がテーマなのでキムタクの「チェンジ」は毎週見た。このブログに感想も書いた。それらを見ても深津をちっともいい女優だとは思わなかった。なのに今回思ったのだから、それは「悪人」において彼女が名演技をしたということなのだろう。と思う。

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